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ギャップのある役に挑む 女優 石原さとみさんインタビュー

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ギャップのある役に挑む 女優 石原さとみさんインタビュー

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 【私のおしゃれ学】

 11月13日に東京・新国立劇場で幕が開く舞台「ピグマリオン」に、イライザという花売り娘の役で主演する。オードリー・ヘプバーン主演で大ヒットした映画「マイ・フェア・レディ」の原作となったジョージ・バーナード・ショーの戯曲で、下町娘が淑女へと大変身していく姿を見せつける。

 「ギャップのある役はあまりやったことがなくて、とても面白いです」。なまりが激しいガラガラとした声を出す前半は「のどが壊れるんじゃないか」と思うほど。そんな女性がどれだけ“変身”するかが、映画と同様にひとつの見どころだ。

 そして、イライザが舞踏会で完璧に振る舞い喝采を浴びる場面の裏側にある、彼女の複雑な心理にも注目してほしいという。「話し方も立ち居振る舞いも美しい。でも、飾りを全部美しいものにしてしまったせいで、本当の自分はどこにいってしまったんだろうと悩んでいるイライザがいるんです」。そんなイライザから、虚飾にとらわれないで他人を見たり、自分を表現する大切さを感じ取る。楽しさの中に深いメッセージが浮かぶ舞台になりそうだ。

 デビューは2003年。映画「わたしのグランパ」で、菅原文太さん演じる刑務所帰りのグランパ(祖父)に初めはおびえつつ、自分を曲げずに生きるグランパに次第にひかれていく孫娘を演じて、ブルーリボン賞新人賞など数々の賞を獲得した。それから10年。ベテラン俳優を前にしても臆さず、自分を出し切った演技に磨きがかかり、映画やドラマ、舞台といった場所で強い存在感を放っている。

 「10代の頃はがむしゃらで通してきました。途中から人を見ること、人のことに気づくようになりましたけど、そうなると今度は気にし過ぎてしまって、いろいろな感情が出てストレスを感じたりして…。今は無理をしなくて良いんだということが見えてきました」

 肩の力が抜け、周囲を気遣いながらも自分を貫き通すやり方が、10年の経験で培われてきた。その過程では大切な出会いがあった。その一人が10年に亡くなった劇作家・演出家のつかこうへいさんだ。08年の舞台「幕末純情伝」で沖田総司役に起用され、役者を徹底的に絞りあげる演出ぶりに直面した。

 「口立てという、その場でセリフを伝える稽古では、瞬発力や記憶力、柔軟性が鍛えられました。毎日が刺激的で、ぜんぜん飽きがきませんでした」。その厳しさも「厳しいというか、愛なんです」。芝居への愛であり役者への愛。それがあるから「くじけないで食らい付いていけました。あそこで得た時間は、どんな時間よりも濃かったです。それを思い出して生かす作業が、これからの仕事でも必要だと感じています」。

 来年公開の映画「MONSTER」(仮)、「幕末高校生」など出演作はめじろ押し。そうして経験を積み重ねていった先にたどりつきたい境地として、「わたしのグランパ」で共演した菅原文太さんを挙げる。「ただ座って、畳の上で一点を見ているシーンがあるんですけど、それだけで何かが伝わってくるんです。その人がいるだけで空気が変わる。その人が来たら明るくなったり緊張したり、やる気が出たりする。そういう人になりたいかな」

 そして「優雅になりたい」とも。自分がやりたい仕事だけを選んでいくということではなく「余裕を持っていたいということ。求められるものに応えたいという気持ちは大切にしたいし、プライベートで自分が求めているものも欲しい。そういうバランスの取れた生活をしていきたいですね」。

 次の10年がたったときにどんな姿を見せているか。楽しみだ。(文:谷口隆一/撮影:フォトグラファー 大石一男/SANKEI EXPRESS

 ■いしはら・さとみ 女優。1986年、東京生まれ。第27回ホリプロタレントスカウトキャラバン「ピュアガール2002」でグランプリ受賞。03年、映画「わたしのグランパ」でデビューし日本アカデミー賞新人賞を受賞。NHK連続テレビ小説「てるてる家族」でヒロインの岩田冬子を演じる。05年、NHK大河ドラマ「義経」、06年、「Ns’あおい」など出演。「奇跡の人」のヘレン・ケラー役で舞台に初挑戦し、08年、つかこうへい作・演出の「幕末純情伝」で2度目の舞台出演。以後も映画「貞子3D」「カラスの親指」、ドラマ「霊能力者 小田霧響子の嘘」「リッチマン,プアウーマン」などに出演。

石原さとみオフィシャルサイト www.horipro.co.jp/talent/PF070/

 【ガイド】

舞台「ピグマリオン」2013年11月13日~12月1日新国立劇場 中劇場

スタイリスト:宮澤敬子

ヘアメーク:濱田マサル

問い合わせ先

オンワード樫山 お客様相談室 (電):03・5476・5811

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