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米大統領選の論戦から脚本発想 映画「コールド・ウォー 香港警察 二つの正義」 リョン・ロクマン監督、サニー・ルク監督

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米大統領選の論戦から脚本発想 映画「コールド・ウォー 香港警察 二つの正義」 リョン・ロクマン監督、サニー・ルク監督

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 「香港はポリスストーリーが好まれる土地柄だから-」。美術スタッフ、助監督として映画界に身を置くリョン・ロクマンとサニー・ルクは、初めてメガホンをとる大事な映画の脚本の執筆に頭をひねり、イメージを膨らませていた。本人たちいわく「ほとんど無名」のこの2人の努力は、警察サスペンス「コールド・ウォー 香港警察 二つの正義」として結実し、昨年、香港で興行収入1位を記録したほか、香港アカデミー賞では主要9部門も制するという快進撃を見せた。

 巧みに警察取材

 香港の繁華街で爆破事件が起こり、その直後、警官5人を乗せた車が行方不明となった。香港警察の次期長官と目されるリー副長官(レオン・カーフェイ)が事態の収拾にあたったが、失踪した警官の中にはリーの息子の名前も。もう一人の副長官、ラウ(アーロン・クォック)は「公私混同の捜査を招く」と激しく批判するが…。

 原題の「寒戦」からは、血が通わない、渇いたイメージがわいてくる。両監督は、はたからは一枚岩に見える警察組織内の権力闘争や、姿をみせない犯人と警察の暗闘といった、水面下での激しい足の蹴り合いに焦点を合わせたのだ。

 ルク監督は「2008年の米大統領選に触発された」と脚本化の発端を語る。執筆に行き詰まっていたとき、ふと目にしたのが米大統領選候補者が繰り広げるディベート、テレビ討論会だった。「諸課題について相手を厳しく攻撃しつつも、候補者同士がハイレベルなやり取りを展開しているのが魅力的だった。香港の警察映画では事件現場が舞台になることは多いけれども、警察上層部の知恵比べは描かれていないのではないか」

 聞けば、警察幹部がピンチに陥ったときの心構え、所作、部下への指示の出し方にいたるまで、鑑賞者が見過ごしがちな部分も忠実に再現したという。どう取材したのか。ロクマン監督は「無名の僕らの取材には誰も応じてくれないから、警察官の友人を質問攻めにした」と振り返った。ただ、守秘義務に触れる核心的な部分に差し掛かると友人はどうしても言葉を濁すので、ロクマン監督はアプローチの方法を変えた。

 「物語では警官が車ごと奪われるが、起こりうると思いますか?」「もしもこんなケースが起きたとしたら、警察はどう対処するでしょうか?」「こんなとき上層部はどんな会議の進め方をすると思いますか?」。仮定の話として聞けばガードも緩み、あらゆる対処法を語ってくれるのでは-との読みは当たった。物語はフィクションでも、登場人物たちが生き生きとしている秘密はそこにある。

 映画を真似た発言

 2人が胸を躍らせているのは、香港警察の幹部たちが作品を鑑賞したとおぼしき様子がみてとれることだ。「記者会見で警察幹部が登場人物のセリフを使って取材に応じているんですよ」。ルク監督は声を弾ませた。また、警察トップが執筆する新聞コラムといえば、当たり障りのない、たとえばテーマは英語教育あたりが相場だったのだが、本作の公開後は、「『僕は昔はこんな仕事をしていた』とかいう警察内部の話」を書く例も散見されるようになった。

 現在、続編の撮影が進行中。いまやすっかり有名監督となった2人、エリート同士の足の引っ張り合いを今度はどのように見せてくれるのだろうか。10月26日から全国順次公開。(高橋天地(たかくに)/SANKEI EXPRESS

 ■梁樂民(リョン・ロクマン) 香港生まれ。「バグ・ミー・テンダー~恋と友情の物語~」(ロー・チーリョン監督)、「コネクテッド」(ベニー・チャン監督)、「イップマン 誕生」(ハーマン・ヤウ監督)などの美術を手がける。本作で監督デビュー。

 ■陸劍青(サニー・ルク) 香港生まれ。1993年に映画界へ。ジョー・マー、リンゴ・ラム、ゴードン・チャン、パトリック・レオン、パン・ホーチョンらの監督作品で、助監督を務めた。本作で念願の監督デビュー。今後は警察サスペンスだけにとどまらず、「あらゆるジャンルの作品に挑戦したい」と話す。

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