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ネットで話題の「廃墟モール」再オープンへ…自虐ネタでPR、汚名返上なるか

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ネットで話題の「廃墟モール」再オープンへ…自虐ネタでPR、汚名返上なるか

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リニューアルオープン後のピエリ守山のイメージ図(サムティ提供)  「明るい廃虚」と呼ばれ、その恐ろしいまでの閑散ぶりがインターネット上を騒がせていたショッピングモール「ピエリ守山」(滋賀県守山市)が12月17日、リニューアルオープンすることになった。再開に当たっては、周辺の競合大型モールとの差別化を図ろうとテナントを一新。フットサルコートなども併設される。しかし、競合店舗が林立する激戦区という状況は変わらず、客足が戻るかはフタを開けてみるまではわからない。新たにオーナーとなった不動産会社「サムティ」(大阪市淀川区)は、「十分勝負できる」と自信たっぷりだが…。(江森梓)

 テナント撤退が相次ぎ、「生ける廃虚」に…

 「土曜の夜なのにこの人通り!! もうヤバすぎw」「正直、沈没寸前な感じ」「なるほどこれは確かに廃墟だわ」

 白を基調にした施設はまだ新しいのに、営業している店舗はほとんど見当たらず、人影さえもない。短文投稿サイト「ツイッター」などでは一時期、ピエリ守山のあまりのさびれっぷりに話題が沸騰。いつしか全国でも有名な「廃墟スポット」となり、評判を聞きつけて遠方からわざわざ見物客が訪れるほどだった。

 ピエリ守山は平成20年9月にオープン。当初は約200店舗を構え、地域での大型モールの先駆け的な存在として大勢の買い物客でにぎわった。

 だが、その直後にリーマン・ショックが発生。ピエリ守山を開発した「大和システム」(大阪市中央区)は一気に資金難に陥った。さらに追い打ちをかけるように、同様の大型モールが相次いで近隣に開業すると、客足は遠のいていった。当然売り上げは伸びず、テナントの撤退が続出。ついには大和システムが倒産した。

 その後は別の企業が細々と運営を続けていたが、最終的にテナントは1ケタ台にまで減り、今年2月に一時閉鎖となった。

 新オーナーは「逆にチャンス」と強気

 「こういう経緯があるからこそ、ピエリ守山は安く買える。逆にチャンスだ」

 新オーナーに名乗りを上げたサムティの担当者は語る。

 ピエリ守山を再生させるに当たって、琵琶湖岸という立地条件を生かし、リゾート気分が味わえる「アウトドアライフ」を新たなコンセプトに据えた。県内初出店を含む外資系ファストファッションの大型店舗を核に、国内外のアパレル雑貨店舗や地元の飲食店を誘致。約4万9千平方メートルのフロアには、約140店舗が入る予定だ。さらに、フットサルコートやアスレチック施設を整備し、年間150億円の売り上げを見込む。

 主にマンション開発などを手がけてきた同社担当者は「初期投資が安かったからこそ、廉価で大規模な店舗区画を提案できた。近隣の大型モールにはまねできない芸当だ。大人から子供まで楽しんでほしい」と意気込む。

 自虐ネタ満載のPRでフォロワー獲得

 “新生”ピエリ守山は、「廃墟」としての知名度を逆手に取ったPRにも余念がない。

 リニューアルオープンを前に、ピエリ守山の公式キャラクター「ナズマ」と「アユ」がツイッターを開設した。当初は琵琶湖の生き物をモチーフにした「ピエリオールスターズ」が9体もいたが、ピエリ守山の衰退とともに減っていき、最後まで生き残ったのがこの2体という。

 ともに、「脱・廃キャラ(脱廃)」を目指し、ナズマは工事の進行状況や出店情報を発信。アユは自虐ネタ満載のシュールなつぶやきをしている。

 「今日はどれくらい脱廃に近づけたかを毎日手帳につけてるの。今日は3ピエリってとこね」「廃キャラからHighキャラへ。蝶のように華やかな変貌をとげるアユをどうか見ていてください」「今日は新しい自分を見つけたくて海にいっていたの~!予想どおりな~んにも見つからなかったわ~!1ピエリでーす」

 こうしたつぶやきはネット上での反響も大きく、11月12日時点でナズマは1100フォロワー、アユは3900フォロワーを超えた。担当者は「幸か不幸か、廃墟としてピエリ守山の露出度は高くなっている。それを逆手に取って、積極的に売り込んでいきたい」と話す。

 「不便」「他で十分」…微妙な反応

 しかし、リニューアルオープンしたからといって、ピエリ守山を取り巻く状況は変わらない。近隣の大型モールで買い物客らの反応を調べてみると、微妙な答えが返ってきた。

 守山市の主婦(53)は「閉店間際に行ったことがあるが、ピエリ守山に行く道路が混雑していた上、食料品店もなかった。とてもじゃないが、また行こうという気にならなかった」とばっさり。

 草津市の歯科助手の女性(26)は「正直、ピエリじゃなくても他のところで用は済みます」。野洲市の男性会社員(42)は「一言で言うと不便。車じゃないと行けないし、家族で出かけたついで以外では、行く気にならない」。ただ、「一日じゅう過ごせる魅力ある施設に生まれ変わってほしい」と期待も込める声もあった。

 立地条件は良い…再生できるか

 郊外の大型商業施設の競争は、平成18年6月の改正「まちづくり三法」の公布を機に激化した。施行後は郊外への出店規制が厳しくなるためで、各地で商業施設の建設ラッシュが始まった。

 国土交通省によると、大規模集客施設の建築確認件数は18年に81件だったのが翌年には135件と急増。19年11月に三法が施行されると、20年には52件まで減っている。サムティの担当者は「この時期、ピエリ守山と同規模以上の施設がつぶれるケースが全国で後を絶たなかった」と明かす。

 立命館大経済学部の鄭小平教授(地域経済学)は「大型商業施設の営業を成り立たせるには、周辺地域人口として5万~10万人が必要」と指摘。その上で、「ピエリ守山がある滋賀県南部はこれから人口増加が見込める地域で、立地条件はいい。他の商業施設にはない魅力を備えたオンリーワンの施設を目指せば、成功する可能性は十分にある」と話している。

 「明るい廃墟」と呼ばれたピエリ守山は、汚名返上できるのか。

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