だが、ロスネフチの株式売却はロシアの懐事情から12月末の期限が迫っていた。「企業価値の精査には時間が必要」と土壇場になって腰が引ける日本政府に対し、世界の資源メジャーや政府の動きは機敏だった。
ロスネフチのセチン社長の決断は、価格ではなく、政治的な思惑に左右された。業界ではロシア側にアプローチしたのはカタールともいわれている。ここにきて8年ぶりに石油輸出国機構(OPEC)が減産で合意。カタールはロシアとの橋渡しで重要な役割も果たした。大手商社幹部は「OPECで接近したカタールとロシアは、将来的には“ガス版OPEC“を築きたい狙いもある」と分析する。
カタール投資庁はグレンコアの株主でもある。そのグレンコアはロスネフチ株取得とともに、日量22万バレルの原油取引を確保し、既存の契約と合わせてビジネスも広げた。株式売却を急ぐロシア側は、欧州販売網も手に入れたわけで、3社の思惑は一致した。
米エクソンの存在
カタール投資庁とグレンコアの連合に軍配があがった背景には、カタールと関係が深い米最大の資源会社エクソンモービルの存在も大きい。トランプ次期米大統領は新政権の外交を担う国務長官にエクソンモービルのレックス・ティラーソン最高経営責任者(CEO)の起用を発表。ロシア通で知られるだけに、外交政策の優先課題に対ロシア政策の見直しを進める狙いは明らかだ。