【櫻井よしこ 美しき勁き国へ】
外務省に日本と日本人の名誉を守る気概はあるのか。強い疑問を抱かざるを得ない。
旧日本軍とは無関係の国際的神父殺害事件を旧日本軍の犯行であったかのように政府高官に報告し、中国の対日歴史非難と歩調を合わせるかのような情報操作を、外務省が行っていた疑いがある。
右の神父殺害事件は1937(昭和12)年、旧日本軍の南京攻略に先立つ10月9日に発生した。中国河北省正定で、当時フランス政府の管轄下にあったカトリック教会が襲われ、神父9人(オランダ人神父を含め全員がヨーロッパ人)が殺害された。世に言う「正定事件」である。
正定事件に関し、中国とオランダは犯人は旧日本軍、殺害理由は日本軍が女性200人を要求したのを神父らが断ったことだと断定する。命を犠牲にして女性たちを守った神父は、「徳と聖性の高い福者(聖人に次ぐ立派な人材)」であり、列福して顕彰すべきだと両国が2014(平成26)年以来バチカンに働きかけている。
世界13億人弱の信者を擁するバチカンの影響力は計り知れない。折しも中国はイギリスまで巻き込んで慰安婦問題をユネスコの記憶遺産に登録申請した。9人の神父列福の動きは、中国の対日歴史戦の一部であろう。