【田村秀男の経済から世界を読む】
追加緩和 政府周辺、肩すかしの「ファウル」
「空振りとは言えないまでも、ファウルだな」。安倍晋三首相の周辺は、日銀が29日の金融政策決定会合で長期国債買い入れ拡大を見送ったことで肩すかしを食らった。財政資金を供給する「ヘリコプターマネー(ヘリマネ)」を警戒する黒田東彦(はるひこ)日銀総裁と、安倍首相周辺には深い溝ができた。しかし、金融緩和偏重では、「黒田バズーカ砲」は無駄撃ちを続けるばかりか、砲弾を撃ち尽くしてしまう。日銀はヘリマネという劇薬は無理でも、偽薬の処方には応じざるを得ないだろう。
無駄金増えるばかり
経済というものはカネの動き方で決まり、カネを使う消費者や経営者の心理が萎縮していればデフレから抜け出られない。
日本にカネはあるが回らない。日銀は年間80兆円もカネを刷って金融機関に流し込んでいるのに、銀行は日銀当座預金に300兆円以上も留め置いている。日銀が当座預金新規分について利子を徴収するマイナス金利を2月に導入したにもかかわらず、銀行はどこ吹く風だ。6月までに日銀当座預金をさらに40兆円も増やした。このうちマイナス金利適用分までも3.4兆円増えた。