自民党が17日にまとめた農林水産業対策は、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)による農家の不安を払拭するだけでなく、輸出拡大など競争力の強化に腐心した内容になった。過度な保護策は経営体質の改善に結びつかないうえ、来年の参院選などで予算の“バラマキ”批判を浴びる恐れもあるためだ。ただ、今回は項目の羅列にとどまった感は否めず、来年秋にまとめる具体策にどこまで実効性を持たせられるかが課題だ。
「生産者の持つ可能性と潜在力を発揮できる環境を整え、次の世代に日本の豊かな食や美しく活力ある地域を引き渡していく」。小泉進次郎農林部会長は同日の農林関係会合で、意欲のある農家が報われる対策をまとめたことを強調した。
対策では、「攻めの農林水産業」を目指す体質強化策を第1の柱に位置づけた。企業などに農地を貸し出す農地中間管理機構(農地バンク)の活用拡大で大規模化を図るほか、無利子の金融支援を充実するなど経営感覚に優れた次世代の担い手育成も目指す。
ある自民党幹部は、従来の農政は山間部など条件が不利な地域の支援や、天候不順による収入減少の補填(ほてん)などの保護策が中心となり、「農家の所得や農産品の需要を拡大させる思想がなかった」と振り返る。