中国がダンピング調査を始めたのは11年9月。12年11月には不当な安値販売で国内製品が被害を受けたと認定、新日鉄住金に9.2%、神鋼特殊鋼管に14.4%の反ダンピング関税を課すようになった。これに対し日本は課税根拠となる損害の因果関係の認定や調査手続きが不十分なことなどを主張していた。
今回のパネルによる“クロ判定”に、経産省は一定の評価を示しながらも「100%納得しているとはいいがたい」と不満も漏らす。日本の重要な主張が一部通らなかったためだ。
中国はパネルの判定に不服があれば、60日以内に最終審に当たる上級委員会に上訴できる。上級委はパネルで事実と認められた点に基づいて、改めて法的判断を下す。パネルの判定が日本の主張の“全面支持”とならなかったことで、経産省は中国が上訴した場合、「パネルの判断が覆る可能性がある」と警戒する。
そもそも、パネルは課税措置をWTO協定に整合するよう是正を求めたが、措置の撤廃までは明示的に要求していない。中国が上訴しなくても、課税措置は維持し、調査方法の変更などで済ます懸念も残されている。