日銀が16日発表した1月の地域経済報告(さくらリポート)で初めて全国9つの地域で景気判断に「回復」の表現が盛り込まれた。公共投資や個人消費など国内需要が堅調に推移し、円高是正で輸出産業の業績も回復傾向にあるからだ。ただ業績回復は大手企業が中心で、景気回復の実感が乏しい個人が多いのも実情だ。
「客単価上がった」
「今まで盛りそばを注文していたお客さんが、エビ天ぷらをつけたりして客単価が上がっている。景気はここ数年で一番いいよ」。群馬県太田市の東武線太田駅近くでそば屋を営む鍵村政順さん(41)は笑顔でこう話す。
富士重工業の企業城下町である太田市。円安を背景とした輸出増で、富士重の同市の工場は2013年の生産台数が、前年比12%増の63万9000台と過去最高だった。さくらリポートでも関東甲信越の「生産」は前回の「持ち直している」から「緩やかに増加している」に上方修正された。
富士重の一次下請け、しげる工業(太田市)の正田寛会長も「仕事は前年比で1割増えた」と強調する。
しかし、中小企業にまで広く景気回復が浸透しているかといえば、必ずしもそうではない。太田市にある富士重の二次下請け部品メーカーの社長は「コスト削減要求もきつくなった。景気が良くなった実感はない」とうつむく。