スティグリッツ氏の消費増税反対発言 再見送りの「援軍」にも
政府が16日開いた国際金融経済分析会合で、米コロンビア大教授のジョセフ・スティグリッツ氏は来年4月の消費税増税見送りを進言した。世界経済の低迷が2008年のリーマン・ショック後では最悪レベルで、増税を強行すれば日本経済を冷やしかねないとの認識があるからだ。ノーベル経済学賞を受賞した一流の学者の発言だけに、安倍晋三首相が増税見送りを決断する強い「援軍」となりそうだ。
スティグリッツ氏は会合で、世界経済について「大低迷だ。まだ危機ではないが、成長は減速している」と指摘した。
とくに、リーマン・ショック後の世界経済を牽引(けんいん)してきた中国の減速は「先進国に直接的、間接的に影響を及ぼす」と指摘。米欧の低迷も続く中、根底にある「世界的な総需要の不足」を解決するには、日本を含む主要国の財政政策が必要だと訴えた。
注目されるのは、こうした現状が、増税先送りの条件として首相が挙げる「世界経済の大幅な収縮」にあたるかだ。政府内でも、世界経済の混乱で消費者心理が冷え込む中で増税を実施すれば、景気が腰折れするという懸念は強い。
この点、首相は会合で、「(26年4月に)消費税を8%に引き上げた後、消費が十分に戻っていない」と話しており、今後、世界経済の減速が国内消費に与える影響を検証していくとみられる。
もっとも、市場では「首相の増税先延ばしの腹は固まっているのではないか」との観測も強まる。
スティグリッツ氏は財政再建より経済成長を優先する首相の考え方に近く、会合で消費税増税に反対と表明することは事前に予測できた。17日の第2回会合以降も首相の考えに近い有識者が相次いで登場する。
会合の名目は、5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に向けた勉強会だが、首相が26年11月に10%への引き上げ見送りを決断した際、有識者を招いた「点検会合」を相次ぎ開いた経緯と酷似しており、「『先送り』に向けた地ならしが始まった」(農林中金総合研究所の南武志主席研究員)との声が上がっている。(山口暢彦)
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