北陸新幹線、延伸開業から1年 客足順調、にぎわう観光地 ブーム続く?
北陸新幹線は長野-金沢間の延伸開業から14日で1年。東京-金沢間を最速約2時間半で結び、首都圏と北陸をぐっと近づけた。順調な客足を背景に沿線の観光地がにぎわう一方、競合する空路は苦戦を強いられた。26日には北海道新幹線が開業し、目新しさが薄れる2年目。自治体やJRは発信を強め、路線の魅力に磨きをかける。
昨年3月14日に金沢へ延伸した北陸新幹線の乗客数は開業前の3倍となり、首都圏と北陸との人の流れを拡大させた。厳しい経営が予想された並行在来線も順調な滑り出しだ。「開業特需」が薄れる2年目が待ち受けるもののJR西日本は「まだ勢いは続く」と強気で、沿線地域と連携してさらなる利用者増を目指す。
延伸区間の上越妙高-糸魚川間の乗客数は、開業から2月末までで898万人と延伸前の在来線特急の3倍。2.2倍を見込んでいたJR西の真鍋精志社長は2月17日の記者会見で「想定以上の利用」と振り返った。
新幹線で押し寄せた人の波は沿線の観光地をにぎわせた。日本旅行によると、昨年6~12月の首都圏から北陸への旅行者数は前年同期比で4倍強となった。北陸から首都圏へも約2.3倍増。北陸に注目が集まったため、関西や東北から訪れる人も増加した。沿線の長野県でも長野駅や飯山駅の観光案内所の利用者が伸びたという。
開業による変化は観光だけにとどまらない。早大、慶大が初めて北陸で合同大学説明会を開いたほか、中央大は金沢市で入試を始めた。関西との結びつきが強い北陸だが、富山市の予備校関係者は「近くなった関東の大学に進んでほしいという親の声も聞く」と話す。
延伸で並行在来線となった長野-金沢間は第三セクター4社に引き継がれた。人口減少で苦しい経営が予想されたが、利用者数は4社とも想定を上回った。石川県のIRいしかわ鉄道では昨年4~9月に1日当たり約2万6000人が利用し、2012年より約4000人増えた。定期券以外の利用が多く、同社は「金沢まで新幹線で来て、富山には在来線で移動する観光客もいた」と分析する。
26日には北海道新幹線が開業する。北陸ブームが去ると懸念する声もあるが、JR西の野中雅志金沢支社長は「4000万人市場の首都圏とつながったのは大きい。開業2年目も勢いを持続させる」と自信を見せた。
今後は乗車率が低い平日昼や観光客が減る冬も含めた切れ目ない利用が課題。JR西は沿線地域と連携した1周年キャンペーンや食の魅力をアピールする旅行商品づくりで情報発信を続ける。
【用語解説】北陸新幹線
東京から北陸を経由し大阪まで約700キロを結ぶ新幹線。国が1973年に整備計画を決定した。98年の長野冬季五輪に合わせ、97年10月に東京-長野間222キロを「長野新幹線」として先行開業、長野-金沢間228キロが昨年3月14日に延伸開業した。JR東日本、西日本が共同開発した新型車両が最高時速260キロで走行し、東京-金沢間を最短2時間28分で結ぶ。金沢-敦賀間は2012年に着工、23年春ごろに開業予定で、敦賀-大阪間のルートは決まっていない。
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