企業の景況感に冷や水 再増税の判断難しく 本田参与転出で広がる臆測

 

 中国経済の減速や原油安に伴う市場の混乱が企業の景況感を急速に冷やしている実態が、11日発表された法人企業景気予測調査から浮き彫りとなった。企業は先行きへの不安から賃上げや設備投資に慎重な姿勢を強めており、1~3月期の国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナスになる可能性もある。来年4月に消費税再増税を予定通り行うかの是非をめぐり、難しい判断を迫られそうだ。

 「(中国減速や原油安など)世界規模での混乱が影響しているのではないか」

 石原伸晃経済再生担当相は11日の会見で、企業の景況感が1~3月期に悪化した理由をこう説明した。

 足元、企業は国内外の景気の先行きに強い懸念を抱いており、内部留保を投資に振り向けるかどうかで逡巡し始めている。平成28年度の設備投資が前年度比6・6%減の見通しとなったのはその裏付けといえる。

 ただでさえGDPの6割を占める個人消費は26年4月の消費税増税後さえないままだ。そこに企業の設備投資意欲の減退が重なり、市場関係者の間では5月中旬に公表される1~3月期のGDPが、景気後退の目安となる2期連続のマイナス成長となる可能性もささやかれ始めた。

 急速に景気の下ぶれ圧力が強まる中で、悩ましいのは来年4月に消費税再増税が控えることだ。政府・与党内では、増税を予定通り行うかについて、16日初会合の政府と有識者が意見交換する「国際金融経済分析会合」での分析結果を材料にするとの見方も強まる。

 再増税について安倍晋三首相は9日の参院本会議で「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り確実に実施する」との考えを改めて強調した。11日には、再増税延期を強く主張してきた首相ブレーンの本田悦朗内閣官房参与を駐スイス大使に充てる人事も決定。この人事をめぐっては、与党内で「再増税を予定通り行うためでは」との臆測も広がる。ただ、その一方で国際金融経済分析会合には再増税に慎重な有識者が顔をそろえており、是非をめぐる判断の行方は見通しにくい。(今井裕治)