日本を始めアジア歴訪の旅を終えたトランプ米大統領。その行く先で必ずトランプ氏を待っていたのが、米大統領専用車両「ビースト」だった。外見は高級リムジンだが、その中身は装甲車。要人を守る特殊車両の実力とは-。(岡田敏彦)
元はキャデラックだが
まず現地警察が先導して“露払い”を行い、米国の警備車両が続く。その後ろに大統領専用リムジン「ビースト」2台が走るが、1台はトランプ大統領が乗り、もう1台は囮(おとり)車だ-。米軍事サイト「WAR ZONE」は、こう説明する。同サイトによると、シークレットサービスは、大統領が乗るビーストを「駅馬車」と呼び、囮の1台は「スペア」と称する。GMのキャデラックをベースに様々な改造が施され、その性能は乗用車と呼ぶには似つかわしくないほどのものだ。
ヘッドライトが壊されたり、あるいは襲撃者に見つからないようライトを消さなければならない事態でも操縦できる赤外線暗視装置を前端グリル部の奥に備えているのを手始めとして、核・生物化学兵器(NBC)攻撃に耐えられるよう車内は完全な気密性を備えるとともに、酸素ボンベも搭載している。
特にテロリストなど襲撃者の攻撃から大統領を守る「鎧」は高性能で、英デイリー・メール紙(電子版)によると、フロントガラスは、暴徒鎮圧の盾などにも使われる丈夫なポリカーボネートと特殊ガラスの5層構造。ドアには厚さ8インチ(約20センチ)の装甲板が仕込まれていて、ライフル銃はもちろん機関銃の弾をも防ぐ。ほかのボディー部分もチタンやアルミ、セラミックなどを重ねた複合装甲で、その厚さは5インチ(約13センチ)に達する。