オープンカーを買ったはいいが、屋根の開閉が面倒でオープンで走るのが億劫になって、かと言って屋根を閉めると狭いし、結局あまり乗らないまま売ってしまいました…というような悲劇は、おそらくこのロードスターとは無縁のものだろう。
想像してみてほしい。雨や雪の時以外はいつでもオープン走行できるクルマ生活を。
ステータスという呪縛からの解放
2人しか乗れず、小旅行レベル以上の大荷物は積めない。実用性ゼロではないが、汎用性は低いと言わざるを得ない。それでもこのクルマでしか味わえない感覚が確実にあり、その感覚がユーザーをステータスという呪縛から解放してくれるように思う。
どんなに気に入って手に入れたクルマであっても、より高価なクルマ、よりステータスの高いクルマに追い越されたり、あるいは信号待ちで並んだりすると、誰しもちょっと悔しくなったりする。今回の試乗では、特に伊豆スカイラインで、様々なスポーツカーとすれ違い、追い越された。ちょっと懐かしいところではホンダのS2000、高価なところではマクラーレン(速すぎて車種不明)、台数が多かった車種としてはポルシェ・ボクスターなどを見かけたが、どんなクルマが来ようと、亀のように抜き去られようと、微塵も悔しさを感じなかった。それはなぜか。付き合う時間の長さに応じて、ドライバーとクルマの距離が縮まり、徐々に相棒のような存在になっていくからではないかと思う。どんなクルマとでもそういう付き合い方はできる、とも思うが、ことロードスターに関してはその間口がとても広い。来る者拒まずで、しかも優しく深くドライバーを受け入れてくれる。よっぽどスレたユーザーでなければ、誰しも虜になってしまうだろう。そして気づけば単なるクルマではなく、かけがえのない相棒となり、ほかの車種では代えられない価値を人とクルマが一緒になって築いていく…。クルマって何なんだろう、そんなことを考えさせられる2日間だった。(文・カメラ 小島純一)