□映画「あの頃エッフェル塔の下で」
撮影現場に一歩足を踏み入れたら、なるべく「面白い人だ」と思われるような映画監督であろうと心掛けているそうだ。「俳優たちが退屈してしまったら、映画館に足を運ぶお客さんだって退屈になってしまうでしょう。ですから、私は現場ではものすごい頻度でジョークを飛ばしますし、とても聞くに堪えないひどいジョークも口にしますよ」
そんな自分の意外な一面を、消え入りそうなほど静かな語り口で明かしてくれたフランスを代表する映画監督・脚本家、アルノー・デプレシャン(55)は、本作ではいつにも増してその知られざる本領を発揮し、若い男女の遠距離恋愛を叙情的かつスリリングに描いた新作「あの頃エッフェル塔の下で」を完成させた。
《長期の海外勤務を終えて、フランスへ帰国することになった外交官で人類学者のポール(マチュー・アマルリック、青年時代はカンタン・ドルメール)。空港で遭遇したトラブルにより忘れかけていた過去の記憶が呼び起こされ、ポールは人生を振り返り始めた。少年時代、ソ連への旅、エステル(ルー・ロワ=ルコリネ)との恋…。エステルから届いた手紙を数十年ぶりに読み返してみると…》