「6億人の単一市場」誕生をうたう東南アジア諸国連合(ASEAN)共同体が年末に発足する東南アジアでは、交渉が大筋合意に達した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について、参加国のマレーシアやベトナムがTPPを足掛かりに市場拡大を目指す一方、タイやインドネシアは自国産業保護の立場から参加に慎重な姿勢を示すなど、温度差が顕著だ。
米国市場へ商機
マレーシアがTPP交渉に参加した最大の理由は、米国市場への輸出てこ入れだ。
日本に学ぶ「ルックイースト政策」を掲げ、米国を敵視したマハティール元首相とは打って変わり、ナジブ首相は対米関係改善を進め、TPP参加も決断。昨年は米大統領として48年ぶりとなるオバマ氏のマレーシア公式訪問を実現させた。
だがTPP交渉で壁となってきたのは、マレーシアが多数派のマレー系の住民や企業を優遇してきた「ブミプトラ(土地の子)政策」の存在。米国などは国有企業と外国企業の競争条件を同一にするよう要求し、国内に論争が起きた。
ムスタパ貿易産業相は5日の声明で「幾つかの譲歩を勝ち取った」と自賛したが、マレー系住民の権利を訴える団体は「合意内容の詳細を調べる」と主張。新たな火種となる可能性もある。