【アートクルーズ】
古都鎌倉の象徴、鶴岡八幡宮の境内にその建物はある。戦後間もない1951(昭和26)年、全国初の公立近代美術館としてオープンした「神奈川県立近代美術館鎌倉館」(鎌倉市)。建築家、坂倉準三が設計した日本のモダニズム建築の代表作だ。
ハスに青々と覆われた平家池に、展示室のある2階部分がせり出すように建っている。それを、池に脚をつっこむような形で細い鉄の列柱群が支え、1階はピロティになっている。建物は中庭を囲んだロの字形。イサム・ノグチの彫刻「コケシ」が、その中庭で優しく来館者を迎え入れる。
「鎌近(かまきん)」などと略称で呼ばれる神奈川県立近代美術館鎌倉館は、八幡宮との借地契約満了に伴い来年1月末には展示活動を終え、3月末に閉館する。建物は残るのか、残すとしてもどう使うかはまだ「八幡宮と協議中」(神奈川県教育局)という。国史跡・鶴岡八幡宮内にある美術館だけに厳しい制約があり、耐震工事の改修もままならないなど、八方塞がりの状況が続いていた。いずれにしても、「鎌近」で美術鑑賞できるのはあと5カ月。