演技終了後にリンクに投げ込まれた「プーさん」などの圧倒的なぬいぐるみの数が彼の人気を物語る。同じリンクを鮮血に染めた昨秋の衝突事故と復活劇も、羽生人気に拍車をかけたのだろう。繊細ではかなげな表情、力強いステップ、その何もかもが、国内外のファンの心をわしづかみにする。
五輪金メダリストとして、時に風格すら感じさせるが、一方で20歳の青年でもある。エキシビションではほほえましいシーンも演出してみせた。
一通りの「顔見せ演技」を終え、上位入賞者らがスタンドに手を振っていたとき、羽生が一人離れてリンクを滑り出した。スタンドとスケーターの目を独り占めにした羽生は4回転ジャンプを跳び、きれいに着氷してみせた。
拍手で迎えられた羽生は優勝したフェルナンデスに滑りより、背中を押した。「お前もやってこいよ」といったのだろう。躊躇する背中を羽生がさらに押し、フェルナンデスも4回転に挑戦して、やや腰を落としながらも見事に着氷して喝采を浴びた。