同じ言葉を何度、口にしたろう。上海で行われていたフィギュアスケートの世界選手権で連覇を逃し、銀メダルに終わった羽生結弦(はにゅう・ゆづる、20)は、「悔しい」を連発した。本当に悔しそうだった。
波瀾万丈だった今季の最終戦である。中国杯での衝突、流血事故に始まり、NHK杯の強行出場、グランプリファイナルの制覇。全日本選手権の3連覇を飾った直後に尿膜管遺残症の腹部手術。ようやく氷上練習に戻ると、今度は右足首を捻挫した。練習の再々開は、3月に入ってからだった。
関係者の不安をよそに、羽生は五輪金メダリストとして世界選手権の連覇だけを狙っていた。ショートプログラム(SP)で首位に立ち、フリーの演技に臨んだが、冒頭の4回転サルコーが2回転となり、続く4回転トーループで転倒した。
それでも演技は崩れず、後半は完璧な滑りをみせたが、4回転の失敗が響き、スペインのハビエル・フェルナンデスに逆転を許した。
フェルナンデスは同じブライアン・オーサー氏に師事する同門の友人であり、安藤美姫(みき)さんのパートナーでもある。