自分の次に滑ったフェルナンデスの演技を見て、逆転を確信したのだろう。控室で盛んに拍手を送った。満面の笑顔で。友人への祝福は心からのものだったろう。それだけに直後のインタビューで口をついた「悔しい」の連発が耳に残った。
王者として、自らの失敗による銀メダルが許せなかったのだろう。けがのせいにも、手術のせいにもしない。アクシデントの連続で練習不足は明らかだったが、それも口にしない。
「失敗は成功の元、失敗をしないと気づけないこともある。今季はいろいろといい経験をさせてもらった。今後のスケートにも人生にも、きっと生きてくる」と、羽生はあくまで前向きだ。ひとつところに留まらないからこそ、彼は王者なのであり、今後もそうあり続けることを期待させるのだろう。
敗れてさらに将来性を感じさせる羽生の銀メダルだった。
≪輝く若い力 最高のフィナーレ≫
世界選手権の優勝こそフェルナンデスに譲った羽生だが、上海での人気は群を抜いた。