アジア1位/世界4位の清国海軍が、格が下の帝國海軍に負けた背景について、共産党中央軍事委員会機関紙・解放軍報も盛んに報じる。いわく《将兵の資質/軍紀弛緩/訓練の無統制/汚職蔓延/闘志の欠如》とか。《歴史を鑑とし、屈辱と失敗に向き合う》ともうたうが、《鑑》は薄汚く曇っているのが常態で《将兵の資質/軍紀弛緩/訓練の無統制/汚職蔓延/闘志の欠如》はもはや、人民解放軍の文化と形容してよい。
沈没した大和型戦艦二番艦・武蔵の発見で一番艦・大和の優しさにも思いが至る。1983年の《歴史と人物》に載った関係者証言によれば、大和は▽女性用美顔クリーム25万人分▽生理用品15万人分▽歯磨き粉・歯ブラシ50万人分を積んでいた。物資欠乏の中、沖縄県民向けに調達した真心だった。それを沖縄の地元紙はかつて、大和が沈まず沖縄に到着していたのなら、沖縄に上陸した米軍への艦砲射撃で、犠牲者は県民人口の半分に達していたと推測。こう報じた。
《あっ、よかった。大和が、沖縄のはるか北方の海に沈められてよかった》
大和と運命を共にした3056名の乗員は、同胞(はらから)による「反日無罪」を海の底で泣いている。済遠の敵前逃亡は軍紀を逸脱したが、沖縄紙の報道は人間性を逸脱した。(政治部専門委員 野口裕之/SANKEI EXPRESS)