中国にとり、博物館所在の威海市・劉公島は海軍揺籃の要衝だったが、引きこもった北洋艦隊の最新鋭主力艦を含む残存艦艇を壊滅させられ、渤海・黄海の制海権を失った戦跡。協同した帝國陸海軍の死者29名に対し、清国側は4000名を数える大惨敗を喫した。珍しくもないが、敗色濃厚と知るや、清国海軍水兵は反乱も起こす。不名誉で不吉な場所を、気味が悪いほどオープンにする姿勢に、中国の王毅外相(61)が8日、日本に向け発信した能書きが蘇った。
「歴史を顧みぬ態度は人類の平和と正義に危害を及ぼす」
真意は軍国主義教育
存在するだけで「人類の平和と正義に危害を及ぼす」中国には言われたくないが「歴史を顧み」の部分は自らにも言い聞かせているのかと…。そんな折、甲午戦争博物館に足を運んでいない小欄に、旧知の安全保障関係者が教えてくれた。気味の悪さの解は博物館に飾られた鐘に有った。鐘にはこんな趣旨の文言が刻まれてある、という。
《歴史を心に刻み 警鐘を鳴らし 海防を強化し 海洋権益を確立す》
汚職蔓延や貧富拡大といった人民の不満を外にそらすべく、屈辱の戦史をあえて明らかにし、日本に警戒感を抱かせ、戦意高揚を謀り、巨費を投じての軍拡の正当性を印象付ける軍国主義教育だったのだ。