点火されたどんどから、すさまじい煙が立ち上る。風が舞って、煙は激しく橋の上に襲いかかった。なにも見えない、なにも写らない。煙いなんてものじゃない。逃げて別の場所に移るまでに、炎のピークは過ぎてしまう。風向きが変わるのをじっと待った。だからしばらくはいぶされたままだった。
火災の取材から帰ってきたカメラマンは臭いで分かる。衣類に煙が染みついているからだ。家に帰ったら「臭うわね」。翌日会社でそんな話をしたら、「それだけいぶされたら、今年は虫も寄りつかないから大丈夫ですよ」と同僚が慰めてくれた。(写真報道局 野村成次、写真も/SANKEI EXPRESS)
■のむら・せいじ 1951(昭和26)年生まれ。産経新聞東京、大阪の写真部長、臨海支局長を経て写真報道局。休日はカメラを持って、奥多摩などの多摩川水系を散策している。