秋めいてきた。残暑はあるかもしれないが、猛暑は過ぎた。セミの声は消え去った。どこかで秋の虫が鳴いている。そしてまた季節が移っていくのだ。
東京都奥多摩町の海沢(うなざわ)を歩いた数年前のこと。突然の雷雨がやってきて、屋根のあるところに逃げ込んだ。夏の終わりを告げるような大音響だ。カミナリを撮るどころではない。野外で傘を差して三脚を立て、カミナリを狙うのは自殺行為なのだ。ゴロゴロドカンときたら一巻の終わり。しばらくすると雨は通り過ぎて、咲き残ったヒマワリのまわりにはトンボが群れていた。雨のおかげで、奥多摩の晩夏の光景を撮れた日だ。
この海沢というところ、多摩川沿いの道路から少し上ったところで、下からでは集落に気がつかない。ここまで拙宅からは2時間ちょっとの、比較的近場の奥多摩だ。2時間ちょっとかと思って、ふと気がついた。