昨年10月に陸上自衛隊朝霞駐屯地(東京都練馬区など)の朝霞訓練場で行われた観閲式の訓示で首相は「力による現状変更は許さないとのわが国の確固たる国家意思を示す。そのために警戒監視や情報収集をはじめとしたさまざまな活動を行っていかねばならない」と述べ、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺などで挑発行為を繰り返す中国を牽制(けんせい)していた。
観閲式は各国の軍関係者やメディアが招待される行事で、中国の軍事的な拡張主義を国際社会に知らしめる絶好の機会でもあった。あえて中国に触れなかったのは、やはり11月10、11両日に北京で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ、習近平国家主席(61)と首脳会談を調整していることが背景にある。政府高官は「首脳会談を前に、日本側からあえて波風を立てる必要はない」と説明する。
実現は五分五分
振り返ってみると、首相は第2次政権発足以来、外遊の際のスピーチや記者会見で、ときには名指しで、東シナ海や南シナ海への中国の積極的な海洋進出の脅威を国際社会に訴え続けてきた。そうした首相の論調に変化が出てきたのが7月下旬から8月上旬に行われた中南米外遊のころからだ。