これを3時間ごとに繰り返しながら作業していくのだが、ポリタンクでは温度管理が難しい。中に空間がある竹の棒でないと藍の発酵度合いが手に伝わってこない。また、つぼに当たっても竹の方が柔らかいためつぼが割れず、撹拌(かくはん)作業がしやすい。すべての工程に意味があり、その意味をしっかりと説明してくれるところは、一流の職人に共通する点だ。そうして熟成されてくると表面に「華」ができる。日々、「華」は大きくなり、独特の臭いをより強く発するようになっていく。藍が気持ちよく生きている状態だ。
「徳島でも人造藍を混ぜたものを『藍染め』と称したり、石灰の代わりに苛性ソーダを使ったりもしている。藍の産地なのだから、徳島だけでもしっかりしないと」と、矢野さんは話す。
苛性ソーダだと堅牢性が落ち、色移りしやすくなる。実際に矢野さんが染めた生地を見せてもらったところ、これまで見てきた藍色が本物でなかったことが一目瞭然であった。それくらい発色の違いもはっきりしている。天然素材のみで作られるため、肌にも優しい。