しかし、明治期に化学合成の人造藍が大量生産されるようになると、天然藍の生産は衰退の一途をたどり、現在、自然素材だけを使った藍染は生産量全体の1%程度にとどまるという。その伝統技法を受け継いでいるのが「本藍染矢野工場」だ。今回、2代目の矢野藍游(らんゆう)さんに話を聞いた。
天然素材ゆえの色
「天然灰汁発酵建てによる本藍染」は、材料も道具もすべてが自然素材が使われている。藍染めで良い色を出すためには、藍が気持ちよく生きられる26度の液温と適度なアルカリ性の状態を保つことが必要となる。そのためのプロセスを「藍建て」と呼ぶ。地元の焼き物「大谷焼」でできた壺に「すくも」(藍の葉を発酵させて染料にしたもの)を入れ、カシの木から取った灰汁に溶かし、日本酒、石灰、ふすまを段階を追って加えていく。そして竹の棒でかき混ぜる。