安倍首相との濃い親密度
1962年の大敗戦時も聖火通過も、今次総選挙でモディ氏属する人民党に負けた国民会議の政権時だった。国民会議の持つ中国への潜在的劣等感は想像するに難くない。人民党の対中意識に加えモディ氏の「強気」な性格は対中政策に影響しよう。
斯くして、モディ氏は一部で報道される「原理主義的民族主義者」ではなく「国益を死守するタフな交渉相手」として現実路線をひた走るだろう。逆に言えば「強気」「タフ」な対中対等交渉の維持には対中劣等感に冒されぬこと、具体的には経済の対中依存度を減らし、軍事力の均衡が大前提となる。
ヒマラヤ山脈に沿う4000キロの印中国境で軍事バランスは中国に偏る。道路・鉄道・トンネル・飛行場を整備し、陸上・航空兵力の集積・越境をインドに比べ格段に速く実施できる。しかも中国は攻撃・防御に有利なより高所に陣取る。モディ氏も道路延べ6000キロを含むインフラの迅速な整備を命令。既に始まっていた9万人以上の部隊新編、新型戦闘機や空中給油機、輸送機、ヘリコプター、野砲や各種ミサイル、戦車の増強配備→運用を効果的にする計画だ。
ところで、伝統的に印外交・安全保障上の立ち位置は概して親日的。とりわけ、共に安全保障と経済の2大課題と格闘し、既に何度も顔を合わせた安倍-モディ両氏の親密度は、歴代日印首相の交誼と比較しても濃厚だ。わが国は原発・兵器を含む対印協力や共同軍事演習を強力に推し進め、「印中経済」より「中国嫌い」を表看板にしたくてウズウズしているモディ氏の本性を引き出さねばならない。(政治部専門委員 野口裕之)