インドのナレンドラ・モディ首相(63)が晩夏、来日すると観測されているが、安倍晋三首相(59)にはヒンドゥー教の学習をお薦めする。ヒンドゥー教の神シヴァは2つの顔を持つ。例えば、雨は豊穣な土地造りには欠かせない反面、時に風水害で土地や人命を奪う。シヴァはこうした《恩恵》と《災い=破壊》の二面性を有する。翻って、インドの中国に対するベクトルは一見明確なようでも、二面性があり複雑だ。モディ氏は首相就任前から印中国境問題では譲らぬ姿勢を明言し続け、歴代首相中突出した「対中強硬派」と観られがちではあるが、わが国同様、現時点では魅力的に映る中国経済への目配りを強いられる。《非同盟》が《全方位》に切り替わっただけの外交文化も忘れてはなるまい。「中国嫌い」「印中経済」という二面性をどの程度、外交・安全保障政策に反映するかは日本の国益にも直結し目が離せない。教義によると、世界の寿命が尽きたとき、シヴァは世界を破壊し新世界を創造する。中国を睨んだ新たな印・アジア太平洋秩序を日印で構築したいところだが…。
矢継ぎ早に派手な牽制
5月の首相就任式には驚いた。中国の指導者が招かれず、特等席にはチベット亡命政府政治最高指導者が着席。パキスタン首相も出席した。印パ独立以来、両国の首脳レベルが首相就任式に出席した前例は互いにない。両首相会談では領土・経済を協議する次官級会議実現やモディ氏訪パで合意した。印周辺国を支援してインドを包囲する中国の《真珠の首飾り戦略》へのクサビとの見方もある。