信念と現実主義の二面性
中国の李克強首相(59)とは就任式翌日に電話会談した。首相級との初電話会談ではあったが、中国側の要請とみられ、緒戦で中国に数々の強力なシグナルを送ったインドに、中国側が引きずられた構図となった。実際、6月には王毅外相(60)が訪印し、印中経済関係促進などで一致した。インドにとり中国は屈指の貿易相手国だが、貿易赤字は3兆5000億円にのぼる。赤字削減は停滞していた印経済の再建にも不可欠で、この点モディ氏は州首相時代、高経済成長を達成した実績も有り、首相就任後に印株式時価総額が過去最高値を付けたほど。国民・市場の期待は大きい。リスクの高い中国からインドへ、投資が環流するとの専門家の予測も少なくない。
総じて、指導者に必要な《信念・胆力=中国嫌い》と《現実主義=印中経済重視》の二面性が認められる。いまひとつ、モディ氏には、対中コンプレックスが感じられない。ここは印中関係を見極める上で重要となってくる。既述した緒戦での印ペースもその発露ではないか。
軍事組織は戦に大敗した戦史を引きずる。特に1962年、中国軍8万が国境地帯に奇襲・侵攻し、印軍1万は戦死・行方不明3000/捕虜4000を出した。屈辱・自信喪失は勝つまで解消できない。政府も同じ。2008年には北京五輪を前に、ニューデリーを通過した聖火を護るべく、軍だけで2万人以上を配置した。チベット人による聖火リレー妨害を、気の毒なほど懸念したのだった。