「まるで漫画のジャイアン(ドラえもんに登場する愛すべきガキ大将)でした。自分が負けていると、『もう1回』『もう少し』と言って、絶対にみんなを帰してくれなかった」
負けず嫌いのメンタリティーという点では目立っていたが、スキルでは特段、目を引く選手ではなかった。青島東FCで指導した大石巌さん(60)は「サッカーのセンスは感じさせたけれど、Jリーグ入りだって驚いたぐらい」と、まな弟子の想像を超す成長に目を細める。
J1浦和入団からドイツブンデスリーガ挑戦、日本代表の主将と飛躍していく原動力になったのは、少年時代から色あせることのないサッカーへの一途な愛情である。
渡辺さんによると、長谷部の視線は小学生の頃から「世界」に向けられ、卒業文集に「ユベントス(イタリア名門クラブ)に入って億単位の金を稼ぐ」と具体的につづったという。「当時は『何を言っているんだ』って思ったけど、ほぼかなえちゃいましたね」