土下座して謝罪したい
今、韓国で暮らすシンは、自由を享受し、資本主義の世の中を知り、友達もたくさんできた。穏やかな日常生活は、北朝鮮のイデオローグと化した固く冷たいシンの心を少しずつ氷解していく。もし母親と兄と話せるならば、シンは今の素直な気持ちを伝えたい。「私は想像力を奪われた結果、私を産んでくれた母と、私と血を分けた兄に対して、人として絶対にしてはいけない、償いようのない罪を犯してしまいました。私は何度でも2人に土下座して謝罪したい」。3月1日から東京・渋谷ユーロスペースほかで全国順次公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:寺河内美奈/SANKEI EXPRESS)
■Shin Dong-hyuk(申東赫) 1982年11月19日、北朝鮮の平安南(ピョンアンナム)道の价川(ケチョン)市外東(ウェドン)里にある政治犯収容所「14号管理所」生まれ。7カ月に及ぶ秘密監獄収監が解かれた96年11月29日、母と兄が公開処刑。発電所、豚の牧場、ミシン修理工を経て、2005年1月2日、14号管理所を脱出。06年2月、中国・上海の韓国領事館に保護。8月、韓国入国。