□脱北者、シン・ドンヒョクさんインタビュー
北朝鮮の政治犯収容所で生まれ育った男性が施設内の非人道的な実態を詳細に語り、アニメーションでもリアルに再現したのが、ドイツのドキュメンタリー映画「北朝鮮強制収容所に生まれて」(マルク・ヴィーゼ監督)だ。彼の名はシン・ドンヒョク(31)。22歳のときに政治犯収容所を脱出し中国経由で韓国へ逃れるまで、収容所の外の世界をまったく知らずに過ごした。「いつの日か、政治犯収容所も、独裁政治もない、自由な国家に生まれ変わった故郷の北朝鮮に帰り、大好きな山で静かに暮らしたい」。そんな願いを込め、講演活動で世界を飛び回り、政治家たちに政治犯収容所の非人道性を訴え、廃止への働きかけを続けてきた。
絶対服従を強要され
政治犯収容所で暮らす両親を持つシンは、生まれながらに政治犯とされ、平壌の北80キロにある「14号管理所」と呼ばれる施設で22年間を過ごした。そこでは子供たちは6歳になると、大人の政治犯と同様に労働を強いられ、看守の気分次第で殴る蹴るの暴行を受けたり、反抗的な態度をとれば拷問すら受ける。食事も粗末なものばかりで、施設内に4万人いるとも言われる政治犯たちは餓えにも苦しんでいる。