自分自身を見つめる“目”。「私、一人でいても本当の意味では孤独になれない。もう一人の自分が見ているから。この作品を書いて、『見られている』から『見守ってもらっている』に意識が変わった。自分が自分であるために、自分を自分が見守ってくれているんだ、って。すごく自分自身も救われました。今は素直に、『世界で一番幸せになってほしい』と自分に対して思えます」
暴走する葉太の自意識だが、読んでいる方は思わず笑ってしまう。「笑ったって、笑ったって! 葉太君は、同情されるのが一番恥ずかしくてつらい子やから。笑ってあげた方が喜ぶはず」
通底するのは、「愛」だ。人が好き、世界が好き。「だって、そう思わんと、損やろ!」(塩塚夢、写真も/SANKEI EXPRESS)
■にし・かなこ 1977年、テヘラン生まれ。カイロ、大阪で育つ。2004年『あおい』でデビュー。07年『通天閣』で第24回織田作之助賞、13年『ふくわらい』で第1回河合隼雄物語賞を受賞。他の著書に『さくら』『しずく』『漁港の肉子ちゃん』などがある。
「舞台」(西加奈子著/講談社、1475円)