【本の話をしよう】
≪苦しみを苦しんであげて≫
生きてるだけで、恥ずかしい-。人気作家、西加奈子さん(36)が、新刊『舞台』を刊行した。ある目的のためにニューヨークを訪れた男が盗難にあって無一文に。過剰な羞恥心とプライドから助けを求められないまま、極限の状態まで追い込まれるという異色の長編小説。思わず「うわあっ」と叫びたくなるような恥ずかしさに満ちた、魂のドラマが誕生した。
繁華街のど真ん中で、ガイドブックを広げるなんて恥ずかしい-。誰だって、旅行先では“地元な自分”を演出してしまいたくなるものだ。それがニューヨークなら、なおさら。
今までとは違う人物
「ニューヨークは憧れの場所。聞くだけでワクワクするほど。名もなき街角でも絵になる。5番街でコーヒー片手にさっそうと歩くビジネスマンがいたりして、初めて訪れたとき『ニューヨークすぎるわ!』と叫びたくなりました。でも、観光客って、ニューヨークが持つ華々しさとは真逆。そんな『恥ずかしさ』を小説にしたら面白いんじゃないか、と」