【本の話をしよう】
「爆睡する」か「ぐっすり寝込む」か。「腰を抜かす」か「腰が抜ける」か。現代短歌を代表する歌人の一人、沖ななもさん(68)が、言葉にまつわるエッセーを『明日へつなぐ言葉』として刊行した。歌人ならではの感性で、複雑かつ豊かな日本語の世界へといざなう。
「爆睡」より「ぐっすり寝込む」のほうが、深く寝ている感じがする。「腰を抜かす」も「腰が抜ける」も同じ意味だけれど、「抜かす」は驚く方で、「抜ける」はがっくりくるような感じがする-。そんなささいなひっかかりを、自身が主宰する歌誌「熾(おき)」(「詞法」から改題)の巻頭文として書き続けてきた。本書はその十数年間分を収録したもの。「よくもまあ、細かいことをこちゃこちゃと書いてきたな、と(笑)。でも、私たちの暮らしって、さざれ石のように小さいものの集合体。ささいなものの中に日常があるのだと思います」