2014.1.5 09:00
「カリブ海の真珠」と呼ばれるキューバ。1959年、フィデル・カストロ氏(前国家評議会議長)や、日本でも肖像写真をプリントしたTシャツがはやったチェ・ゲバラらがキューバ革命の末、政権を樹立した社会主義国家だ。ソ連崩壊後も政治体制を変えずに、カリスマ性のあるカストロ氏(現在は政界から引退)が率いてきた。
私はここキューバで現代を象徴するような、対照的な2人に出会った。彼らの話から始めよう。
1人目は東部の都市で土木作業員として働く20代の青年、ニック。仕事が休みの日には小銭を稼ぐため、葉巻工場で働く友人がくすねた葉巻を観光客に販売する。彼は「給料だけでは生活が厳しいから副業してる」と切り出し、祖国への不満を延々と爆発させた。約8ドル(約800円)の安い月給、不十分な食料配給、ハリケーンで家の屋根が外れても補助もなく、隣人の家に寝泊まりしている現状。自らを「カストロの奴隷」と自虐的に言い放つ。
彼は、結婚を機にカナダに移住して、5年間の車工場勤務でキューバに住む母親に家を2軒購入し、いかしたアメ車も買った友人を羨(うらや)ましがる。「あー、僕も外国人と結婚して、海外に暮らして、お金をたくさん稼ぎたい!」。ニックにとって「社会主義」とは、1カ月8ドルで働く貧困そのものだった。