カーナビで設備付きトイレ検索も 増える「ストーマ」情報
■日常生活や管理のサイトを開設
大腸がんやぼうこうがんなどが原因で、おなかに人工肛門・人工ぼうこう(ストーマ)を造設した人(オストメイト)ら向けの情報提供が増えている。必要な設備のあるトイレの情報のほか、日常生活のポイントなどを専門家がまとめたサイトも開設された。(寺田理恵)
毎日ケアが必要
便意や尿意を感じたり、我慢したりすることができないオストメイトは、便や尿をためておく袋(パウチ)と肌に張る面板からなる装具を腹部に装着。1日数回、たまった排泄(はいせつ)物を捨てたり、数日に1回、装具を交換したりするストーマケアを行う。
おなかの袋から排泄物を捨てるのに適した高さの汚物流しや便が漏れるなどの緊急時におなかを温水で洗い流せるシャワーなど、オストメイト対応設備も備えた多機能トイレが増えてきた。平成18年のバリアフリー新法施行により、対応設備の設置を義務付けられた施設が、旅客施設以外の公共的施設にも拡大されたのがきっかけだ。自治体のホームページなどで対応トイレの場所を示す地図が見られるようになった。
トヨタ自動車は5月21日、対応トイレをカーナビゲーションで探せる情報提供サービスを開始した。カーナビとインターネットを接続するシステムの専用アプリに「多機能トイレナビ(東海3県版)」を追加。愛知、岐阜、三重の3県で高速道路や「道の駅」に設置された対応トイレの場所とルートが検索できる。
監修したNPO法人、伊勢志摩バリアフリーツアーセンター(三重県鳥羽市)によると、トイレ内の写真を見られるのが特徴で、腹部洗浄用シャワーが付いているかなどを確認できる。同センターでは「使う人にとって必要な設備があるかどうかが具体的に分かればより快適に旅行ができる」と話す。
温泉も行ける
オストメイトや介護・医療従事者向けに、ストーマの管理や日常生活のこつなどの情報をまとめた「ストーマケア情報サイト」を開設したのは、装具メーカーのアルケア(東京都墨田区)だ。日本創傷・オストミー・失禁管理学会の皮膚・排泄ケア認定看護師らが執筆し、5月30日から公開されている。
オストメイトは身体障害者手帳を交付されていても外見からは分からず、本人も知られたがらない傾向がある。装具の使い方や生活上の困りごとは看護師にも理解されていない場合が多い。また、装具交換はかつて医療行為とされていたが、23年から介護職も行えるようになり、介護職からも問い合わせがある。
このため、サイトでは実践的な情報を記載した。例えば、病気や加齢で手指の機能に問題が生じた場合、装具を自分で扱えるかが課題となる。そうした際に介護・医療従事者が本人の機能を知る方法として、「缶入り飲料のプルトップが自分でスムーズに開けられるか」など、誰でも答えやすい質問をして確かめる方法が紹介されている。
執筆メンバーで認定看護師の渡辺千登世さんは「患者それぞれに合った選択ができるよう、均質な情報提供を心がけた。一工夫すれば温泉にも行けるので、ストーマに合わせて生活するのではなく、自分の生活にストーマを合わせてほしい」と話している。
■高齢化で管理に不安
オストメイトでつくる日本オストミー協会(東京都葛飾区)によると、国内のストーマ保有者は推計約20万人。高齢化に伴い、自分で管理ができなくなる不安が高まっており、同協会が平成22年に実施した調査(回収数572人)では、「生活上抱えている問題や悩み」で最も多かったのが「ストーマ管理ができなくなった場合」だった。
自身もオストメイトの高石道明前会長(71)は「排泄というプライベートな行為だけに家族にも触らせていない人が少なくない。保有者の介護に関わる方々への研修をどう進めるかが課題だ」としている。
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