気分や風潮に容易に左右されるのは日本人の気質なのであろうか。自らの判断や認識よりも噂と風評、気分に簡単に流される超フロー社会が日本の実態なのであることを今回の出来事は図らずも露呈してくれた。
昨今、音楽だけではなく、さまざまなドキュメンタリー番組においても、感動秘話の題材があふれすぎている。たしかに真にハンディキャップを負った人々や不遇な境遇に身を置かざるを得なくなった悲運の人々に、客観的で温かい目を注ぐことは素晴らしいことである。しかし、感動商品のために、番組制作者の演出や脚色が入るならば、この感動秘話を自己演出する可能性もまた生まれることになる。
今回の一件は、私たちは何を聴き、それを自分でどのように判断するのか、という重い問いかけのように思う。(寄稿)