肉厚でおいしい養殖アナゴ 近大がノウハウ提供、泉南市と地元漁協が挑戦
大阪湾のアナゴ漁で知られる大阪府泉南市と地元の岡田浦漁協が、稚魚から成魚にするアナゴの養殖を始めた。同市のアナゴの漁獲量は府内で最も多いが、年々減少。世界初のクロマグロの完全養殖に成功した近畿大水産研究所がアナゴ養殖のノウハウを提供する。近大が養殖し成魚となったアナゴの試食会では、「肉厚でおいしい」と市民らの評判に。関係者は養殖アナゴを泉南市の新たなブランドに育てたいと意気込んでいる。(中井美樹)
同市のアナゴの漁獲量は平成16年には140トンあったが、25年には8割減以上の25トンにまで減少。サイズも小ぶりになっているという。市などによると、原因として乱獲や、エサが減っていることなどが考えられるが、はっきりとはわかっていない。漁をしても採算が合わず、アナゴ漁をやめる漁師も少なくないという。
こうした中、市の名物であるアナゴの生産高を増やそうと、市がプロジェクトを発案。近大水産研究所の協力を取り付けた。
同研究所はマグロ養殖で世界的な成果を出す一方で、16年からアナゴ養殖の研究に着手。アナゴは生態が詳しく分かっておらず、養殖技術は確立されていないが、同研究所は稚魚から成魚に育てることに成功。人工孵(ふ)化(か)には至っていないものの、注目を集めている。
こうしたノウハウを身につけようと、市とともに養殖に取り組むことになった岡田浦漁協職員2人が、研究現場の近大水産研究所富山実験場(富山県射(い)水(みず)市)で、エサの種類ややり方、水温管理の方法などについて指導を受けた。
さらに、漁協の敷地内には、養殖用の水槽10基を設置。3月には、富山から運ばれたアナゴ約100匹を水槽に放流した。放流に合わせたイベントもあり、富山実験場で稚魚から200グラムのサイズに育ったアナゴをかば焼きにして市民に振る舞われた。地元漁師は「こんな大きなサイズのアナゴは泉南ではもうとれない」と驚き、市民らも「肉厚でおいしい」と味わった。
水槽のアナゴは、職員らが毎日エサをやりながら、食べる量や成長速度などのデータを収集している。今月初めには、大阪湾で取れた約50キロ分の稚魚を水槽に放ち、成育に期待がかかっている。
富山の実験場では特産のシロエビをエサに活用する研究が行われている。泉南市でも、特産物をエサにすることを検討。新たなブランド確立を目指す。
プロジェクトには、国の地方創生関連の交付金として27年度に1300万円、28年度には1800万円が予算化されている。市と漁協は「水槽でデータを集積するとともに、販路も開拓し、2年後には泉南名物として売り出していきたい」としている。
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