■坂道切り抜けられず…救援要請
磐越西線を郡山へ向かう石油列車。磐梯町駅を通過すると上り坂の傾斜が増し、カーブもきつくなる。レール上で車輪が空回りしていることを知らせる空転ランプが何度も点灯した。速度を上げれば一気に登り切れると考えるのは素人の発想。正解は逆だ。運転士の遠藤文重さんは列車の速度を時速40キロから30キロ、25キロと落とし、車重を使って車輪とレールの摩擦を稼いでいく。
砂をまき減速
同時に砂まきも開始した。車輪の横に装着された小箱には10キログラム程度の砂が詰められており、ホースから車輪に向けて少しずつ砂をまき、レールとのかみ合わせをよくする。今回のDD51は九州など雪のない地域から集められている。砂まき装置には急ごしらえで凍結防止のヒーターが装着されていた。
遠藤さんは、運転席の窓を開け耳を澄ます。空転ランプだけでは分からない車輪とレールの摩擦、砂のかみ具合を耳で判断するためだ。いつの間にか外は吹雪だ。吹きすさぶ風の音、ディーゼルエンジンの排気音に交じって甲高い金属音が聞こえる。「もっと速度を落とせ。砂をまけ」
間もなく翁島の駅だ。急カーブが眼前に迫る。速度は既に10キロ程度まで落ち、それでも空転ランプは消えない。パワーを微調整しなんとか切り抜けようとしたとき、ひときわ甲高い音を立てて車輪は空転し、石油列車は前進をやめた。傾斜が落ちるカーブの出口まであとわずかだった。