金田: ちなみに、現在の社長は「ご飯から食べる」と言っていました。なぜかというと、「駅弁なので、ご飯がおいしくなければいけない」という考え方をしているからなんですよね。
土肥: 昔から食べているので、食べる順番が確立している人が多いのかも。だから「ああだ、こうだ」と言いながら議論が盛り上がるのかもしれません。シウマイはいまから90年ほど前に販売しているわけですが、その間、レシピは何度変えたのでしょうか?
金田: いえ、一度も変えたことはありません。
土肥: ロングセラー商品の話を聞いていると、「時代に合わせて味を少しずつ変えてきた」といった話をよく聞くのですが、シウマイの味は一度も変えていない? それはなぜですか?
金田: 駅弁がルーツだからですね。「このシウマイを食べると、家族で旅行をしたときのことを思い出す」「横浜へ出張に行っていたお父さんが土産に買ってきた」といった声が多いんです。旅の思い出と強く結び付いているので、味を変えることはできないんですよね。変えてしまうと、みなさんの思い出を変えてしまうかもしれません。
土肥: とはいえ、社内からは「いくらなんでも時代に合わせて味を変えようよ」といった意見はなかったですか?
金田: 全くなかったわけではないと思います。それでも「シウマイの味を変えてはいけない。サイズも変えてはいけない」という方針を守ってきました。ちなみに、経木(きょうぎ)の折箱も変わっていません。アツアツのご飯をプラスチックの箱に入れると、時間が経つと水分が出てくるので、ご飯がべしゃべしゃになる。でも木を使うと、その水分をうまく調整することがきるんですよね。時間が経っても、ご飯はモチモチしていて、冷めてもおいしく食べることができる。ということで、経木の折箱も絶対に変えてはいけません。
土肥: 変えないことでファンを増やしてきたわけですね。そして、その方針は今後も変わらないと。本日はありがとうございました。
(終わり)