海江田経産相が被災地に石油を送る総合的な計画案を発表したのは17日。それまでは政府と民間の水面下の交渉が続いていたわけだ。
JR貨物の指令室に顔を出した小林社長は、不眠不休で働く社員をねぎらいつつ、被災地への石油列車運行の可能性を打診してみた。
できない理由はたくさんある。難しいという反応が大勢を占めた。計画停電の影響も大きい。否定的な意見に小林社長は「やってみなければわからないじゃないか」と思わず声を荒らげた。小林社長のなかでは石油列車の運行へ決意が固まりつつあった。
小林社長は個人的な情報網を駆使して計画停電の情報を収集。JR旅客会社の幹部らとともに鉄道を計画停電の対象から外す交渉に奔走し、石油輸送の下地を整えた。そして、異常時対策に取り組む指令室に正式に被災地向け臨時石油列車の運行指示が届く。指令室長の安田晴彦さんは14日夜、「コンテナを捨てたわけではないが、今は石油を優先するぞ」と号令を発した。
ただ、運ぶべき石油はどこにあるのか、タンク貨車は手配できるのか。輸送実現には不確かなことばかりだった。
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