この人事は、ゴーン氏が主導するルノー・日産のアライアンスのより強固なマネジメント体制を目指したものである。ゴーン氏がグループ経営の強いリーダーであることには変わりはない。確かに、ゴーン次期会長は、日産自動車への直接的な経営関与は減少するだろう。そうは言っても、ルノー、日産、三菱のアライアンスを基にしたグループ経営の強いリーダーとして、アライアンスシナジーを追求することに変化はないと見るべきだ。
欧州の業界関係者には、ルノーと日産の経営統合も含めた再編シナリオに強い関心がある。先日、フランス政府が保有株を削減する場合、ゴーン氏は「フランス政府が手を引き次第、あらゆる可能性が開かれる。それほど長い時間はかからないといえるだろう」とコメントを発した。フランス政府が保有するルノー株を売却するなら、両社の経営統合へ道を切り開いたとの見方もある。
しかし、恐らく大きな影響はないのではないか。ゴーン氏がルノー・日産アライアンスを率い、世界トップの自動車グループへ邁進(まいしん)する限り、現在のルノーが日産の44%を保有する資本バランスに立ったグループガバナンスを継続する公算が大きいと考えるからだ。
ゴーン氏の日産での経営成果に疑うところはない。ゴーン氏は日産を完全に復活させ、最も成功した国際的な企業アライアンスに育て上げた。日本的商習慣のタブーに切り込み、ゴーン氏は日産だけではなく、日本をも変えたと言って過言ではないだろう。この功績を高く評価したい。