どういうことでしょうか。人のつながりには、強弱があります。たとえば親友同士は「強いつながり」ですし、ただの知り合いは「弱いつながり」です。私たちは「強いつながり」を重視しがちですが、実は新しい知を生み出すには、弱いつながりのほうが適している、ということが経営学の研究で示されています。
人間のつながりをネットワークとして見ると、弱いつながりのほうが簡単につくれるので、遠くに伸びやすい。遠くに伸びたら、多様な情報が効率的に届くのです。この弱いつながりをつくるのは、好奇心旺盛で行動力がある「チャラ男」タイプの人材です。
しかし、それだけでは組織は成り立ちません。生み出されたクリエーティブな萌芽を、実現しなければいけない。新規性がある企画でも、上長に上がるほど稟議書が通らないことはよくあります。そこで組織内で深い人間関係を築いて、橋渡しができる「根回しオヤジ」が存在感を示すのです。
「チャラ男」と「根回しオヤジ」をうまくペアリングして、イノベーションを起こす。最新の経営学から見ると、このベストカップルこそ日本企業に求められているといえるでしょう。
入山章栄
1996年慶應義塾大学卒業、98年同大学院修士課程修了。2008年米ピッツバーグ大学経営大学院博士号取得。13年より早稲田大学ビジネススクール准教授。
(大高志帆=構成 奥谷 仁、的野弘路=撮影)(PRESIDENT Online)