出産後、度々40度以上の高熱と全身に痛みが走る日々が続き、乳房に膿がたまる乳腺炎とわかった。初期段階で治療すれば完治できるが、まれに重症化すると敗血症や死に至ることもある。出産直後から仕事に復帰したものの、乳児を預かってくれる保育施設などはなく、時には子供を連れて商談に臨むことすらあった。
「仕事上のストレスや疲れもあったが、何よりもつらかったのは最愛の息子を抱けなくなったこと」と振り返る。結局、このままでは会社を続けられないと判断、14年に店をすべて閉めた。
付加価値を生む
「これからどうすればいいのだろうか」-。病床で、ノートに自分のこと、家族のこと、仕事のことなどを書き連ねた。
書いていくうちに、商品やサービスの良さをうまく見つけて、プロデュースすることが得意なことに気付く。「いわば価値がゼロと思われるもので付加価値を生み出すビジネスに向いているのでは」
15年3月、起業家としてあるビジネスプランコンテストに出場するが、敗退。ただ、審査員の目にとまり、後日面談して改めて自己PRをするや否や、その審査員が携帯電話である人に連絡してくれた。「この会社を手伝わないか」と言われ、ある大手企業の新規事業開発に関わることになった。さらに起業支援を手掛けるベンチャー企業や、兵庫県三田市の養豚農家からも声がかかった。
遠藤社長は「これまでの経験を生かし起業支援や事業支援を通じて、一つでも多くのプロデュースの実績を積み上げたい。いずれは『つ・い・つ・い』とは別に、起業支援や事業支援をする会社を立ち上げたい」と目を輝かせる。
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【プロフィル】遠藤貴子
えんどう・たかこ 恵泉女学園大人文卒。都市銀行子会社、不動産会社勤務を経て、2008年つ・い・つ・いを設立し、社長に就く。11年六本木ヒルズの出店を手始めに、東京都内に店舗を展開したが、14年にすべて閉店。以後、企業向けに新規事業支援などを手掛ける。37歳。東京都出身。