三菱重工業が、巨額の損失を出していた大型客船の建造から撤退することを決めた。同社は開発中のジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」でも5度目の納入延期がささやかれるなど、他にもさまざまなトラブルに直面している。日本のものづくりをリードしてきた「機械の総合デパート」は、まさに満身創痍(そうい)の状態だ。
「大変大きな損失を出してしまった。深く反省しないといけない」。三菱重工が大型客船から撤退すると発表した10月18日。東京都港区の本社で会見した宮永俊一社長は、険しい表情で語った。
同社が米カーニバル傘下の独アイーダ・クルーズから、総トン数が10万トンを超える大型客船2隻を受注したのは2011年。15年3月には1隻目を引き渡す予定だったが、顧客の要望を満たせず、何度も設計図を書き直させられたうえ、工事のやり直しが頻発。納入は1年後にずれ込んだ。
現在までに計上した損失は約2400億円と、約1000億円といわれる受注額をはるかに上回る。利幅の大きい大型客船を手がけることで、収益低迷にあえぐ造船事業を浮上させるもくろみは、もろくも崩れ去った格好だ。
一方、MRJも08年に事業化を決めた時点で13年の納入を目指していたが、設計変更や空調の不具合といったトラブルが発生。すでに4回の納入延期を繰り返し、現時点で予定する18年半ばの初号機引き渡しも遅れる可能性が高い。