国内では、鹿やイノシシなどの獣皮革を“生産”する環境が整いつつある。
農林水産省のまとめによると農産物の獣害被害額は1999年度以降、年200億円前後で推移、このうち鹿やイノシシ、猿による被害が7割を占める。原因は生息地の拡大に加え、狩猟従事者の高齢化、耕作放棄地の増加などだが、獣害による営農意欲の低下も深刻視されている。
農林水産被害の防止に向け、鳥獣被害防止特措法で被害対策や捕獲推進を講じる中、15年5月に保護を主体としていた鳥獣保護法が鳥獣保護管理法として改正施行され、個体数の適正管理という新たな視点が導入された。13年度の環境省推定によると生息数は鹿325万頭、イノシシ88万頭だが、23年度に半減させるのが目標だ。
捕獲推進策の一つとして浮上しているのが捕獲鳥獣の食肉利活用だ。一部地域で先行してきたが、14年11月に衛生管理に関する指針を厚生労働省が策定したことで食肉処理施設は増加、地域おこしの食材として流通は拡大しつつある。
また、捕獲獣を埋設などで廃棄処理するのではなく、獣皮を資源として活用したいと考えた地域などが自然保護活動を行うNPO法人(特定非営利活動法人)と連携、獣皮の利活用で地域活性化と雇用機会創出を目指す「MATAGI(マタギ)プロジェクト」を13年に立ち上げた。現在、獣皮産地として142地域が参加、獣皮の資源化に取り組んでいる。しかし地域おこしの素材として活用し6次産業化できた地域がある一方、人手不足で製品加工に至らない地域も多い。
◆TPP締結後にらむ
また、革製品の企画製造会社やデザイナーなどは、その規模や企画に応じた皮革素材を求める。捕獲獣は野生のため数量や品質にばらつきがあり、どの地域が供給元の産地となり得るかの情報を求めていた。
レザー・サーカスが参加資格を産地、なめし関連業者と作り手、製品小売業者に限定したのは、ブランド力を高め、商品背景が消費者に明確に伝えることができる体制とするためだ。産地にはマタギプロジェクト参加地域に加え、国内ブランド豚生産地域など獣皮を革原料として販売していた畜産業者も参加した。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)締結後の環境変化をにらみ、食肉生産に加えて皮革もブランド化することで総合的なブランド力向上を求めていると、山口社長は分析する。
募集から1カ月が過ぎた3日現在、12団体が加盟し、大手小売業者からも具体的な商品企画とともに参加への相談が寄せられているという。今後、3年で120団体の加盟を目指し、レザー・サーカス発のメード・イン・ジャパン皮革製品を生み出す土壌づくりを進める方針だ。(日野稚子)