旭化成建材によるデータ偽装問題の拡大で、親会社の旭化成の業績への影響が今後、深刻化する恐れがある。企業イメージの失墜で住宅事業を中心に販売面の打撃が予想されるほか、マンション住民への補償や改修など巨額の対策費用が発生する可能性も高い。6日に発表した平成28年3月期の業績見通しにはデータ偽装の影響を織り込まなかったため、表向きは影響はないが、先行きを懸念する販売現場には重苦しいムードが漂っている。
「住宅販売は好調で、建材も一部キャンセルはあるが、業績に大きく反映するほどの影響は出ていない」。過去最高の連結営業利益を更新した6日の9月中間決算会見の席上、小堀秀毅専務執行役員は、データ偽装の影響についてこう説明した。
ただ、同時に小堀氏は建材事業について「原因究明に全力を挙げており、新規の受注活動をしていない」ことを明らかにした。また全社の売上高の約3割を占める住宅事業についても「今後の受注いかんでは来期業績に影響する」と述べた。
都内の住宅展示場では住宅子会社、旭化成ホームズの営業担当者が「(売れ行きは)今のところ変わらない」と話すが、「先行きに不安を感じる」と表情を曇らせる。
旭化成は、建材・住宅事業以外でも懸念材料が横たわっている。石油化学事業は今後、中国の景気減速などで採算低下が予想され、ヘルスケア事業も主力の排尿障害改善薬の特許が今年で切れ、安価なジェネリック(後発薬)に浸食されつつある。
商業施設の賃貸事業などが好調な三井不動産も中間期は過去最高の連結最終利益を計上したが、佐藤雅敏常務執行役員は「(マンション販売に)影響が生じる可能性はある」と懸念する。足元の業績は好調でも経営の先行きには暗雲が立ちこめている。