そして、「もっといいクルマづくり」は抽象論から具現化へ移行してきた。トヨタ・ニューグローバル・アーキテクチャ(TNGA)でプラットホームやエンジンを刷新。初期投資を40%抑えかつ更新投資が非常に低い「シンプル、スリム、フレキシブル」を掲げた新生産体質「もっといい工場づくり」にもめどがついた。メキシコ新工場は、TNGA新型「カローラ」を生産する新体質の工場となるわけだ。
トヨタの現在の世界生産台数は980万台。富士重工業SIAでの受託生産終了(10万台)、豪州工場閉鎖(15万台)で25万台の生産能力が減少する。メキシコで20万台、中国新ライン10万台の合計30万台が加わっても、19年時点の世界生産能力は1000万台ちょっとという計算だ。稼働率が100%以上でも、世界販売台数はダイハツ工業と日野自動車を加えて1100万~1150台にとどまる。
1400万台近くの能力増強を急ぐ欧州勢のフォルクスワーゲンやルノー(日産を含む)との差は広がる一方。一気に突き放そうとする欧州勢に対して、トヨタは我慢の年輪成長を重ねる方針だ。しかし、トヨタが規模を放棄していると考えるのは誤解だろう。実力が回復すれば、結果として規模は追いついてくる。